
鏡の前の、その一言から。
外国人のお客様が席につくなり、スマホの画面をこちらに向ける。映っているのは、あごのラインでぱつんと揃った、軽やかなショートボブ。「これにしたいの」——そこまでは笑顔でうなずけても、続く英語の説明にふっと言葉が追いつかなくなる。そんな瞬間に覚えのある方も多いはずです。
ショートボブは、シルエットがシンプルなぶん、ほんの数センチの長さや毛先の質感ひとつで、仕上がりの印象がまるごと変わる、案外デリケートなスタイル。だからこそ、ハサミを入れる前の「言葉のすり合わせ」が、そのまま満足度に直結します。今回は、その最初のひと押しになる英語を集めました。
ショートボブには、英語の「呼び名」がいくつもある
まず知っておきたいのは、日本語の「ショートボブ」にぴったり一対一で対応する英語はない、ということ。英語圏のサロンでは、長さや質感に応じて呼び分けがあり、ゲストはその語感でイメージを伝えてきます。
ざっくり整理すると、あご下で軽く動きをつけた今っぽい形は French bob、あごのラインでまっすぐ揃えた形は chin-length bob、毛先をぱつっと切りそろえたシャープな形は blunt bob と呼ばれます。この引き出しがいくつかあるだけで、お客様の「こういうの」を的確に受け止められるようになります。

「切れるのに、言葉で詰まる」をなくす
技術には自信があるのに、英語になると急にカウンセリングの主導権を失ってしまう——これは多くの美容師さんが抱える、もどかしさの正体です。とくにショートボブは取り返しがつきにくい長さ。「もう少し長めのつもりだった」という小さなズレが、お客様には大きなショックになりかねません。
逆に言えば、長さ・毛先・顔まわりをその場で英語で確認できれば、失敗の芽はほとんどなくなります。むずかしい言い回しは要りません。短い疑問文をいくつか押さえておくだけで十分です。


①長さはどれくらい切りますか?
How much do you want to cut?
(どれくらい切りますか?)
【覚えておきたい単語・フレーズ】
How much =どれくらい
cut =切る
go short =短くする
②ショートボブにしますか?
Do you want a short bob?
(ショートボブにしますか?)
【覚えておきたい単語・フレーズ】
short bob =ショートボブ
want =〜したい、ほしい
Do you want ~? =〜にしますか?
③あごくらいの長さはどうですか?
How about chin length?
(あごくらいの長さはどうですか?)
【覚えておきたい単語・フレーズ】
How about ~? =〜はどうですか?
chin =あご
length =長さ
④前髪は作りますか?
Do you want bangs?
(前髪は作りますか?)
【覚えておきたい単語・フレーズ】
bangs =前髪
cut bangs =前髪を作る
fringe =前髪(イギリス英語)
⑤レイヤーは入れますか?
Do you want some layers?
(レイヤーは入れますか?)
【覚えておきたい単語・フレーズ】
layers =レイヤー、段
some =少し、いくつか
add layers =レイヤーを入れる
⑥後ろは短くしますか?
Do you want the back shorter?
(後ろは短くしますか?)
【覚えておきたい単語・フレーズ】
the back =後ろ(の髪)
shorter =もっと短く
short =短い
⑦これくらいの長さで大丈夫ですか?
Is this length okay?
(これくらいの長さで大丈夫ですか?)
【覚えておきたい単語・フレーズ】
this length =この長さ
okay =大丈夫、いい
How’s this? =これでどうですか?
覚えておきたい、ショートボブに役立つ追加10フレーズ
chin-length bob = あごの長さのボブ(一番伝わりやすい定番の言い方)
blunt ends = ぱつっと切りそろえた毛先(重め・シャープな質感)
face-framing layers = 顔まわりを縁取るレイヤー
grow it out =(短い髪を)伸ばしていく(「今は短いけど伸ばしたい」ときに)
trim the ends = 毛先を軽く整える(長さは変えず形だけ)
tuck it behind your ears = 耳にかける(スタイリングの説明で活躍)
air-dry = 自然乾燥させる(「乾かすだけでまとまる」と伝えるとき)
low-maintenance cut = 手入れがラクなカット(忙しいゲストへの提案に)
add movement =(毛先に)動きを出す(軽さ・抜け感を出したいとき)
round out the shape = シルエットに丸みを出す(後ろの形を説明するとき)
「呼び名」を一つ足すだけで、会話が動き出す
ここまで読んで気づかれたかもしれませんが、ショートボブのカウンセリングで効くのは、難しい構文ではなく、的確な単語です。ゲストが見せてくれた写真に「これは French bob っぽいですね」と一言添えるだけで、相手は「この人は分かってくれている」と一気に安心します。専門性は、流暢さよりも言葉の解像度で伝わるのです。
そしてもう一つ。英語のカウンセリングは、こちらが一方的に訳すものではなく、ゲストと言葉を持ち寄って完成形を一緒に組み立てていく共同作業です。長さを確認し、毛先を選んでもらい、顔まわりを提案し、最後に「これで大丈夫ですか」と一区切りつける——この流れを今日の7つのフレーズで押さえておけば、言葉の壁は驚くほど低くなります。
次に外国人のゲストがあのスマホ画面をこちらに向けたとき、今日のフレーズが、あなたの背中をそっと押してくれますように。まずは①と②だけでも、声に出して口になじませてみてください。
