
中橋祐也(ナカハシユウヤ)1991年生まれ
オランダ・アムステルダム|美容師
日本国内3店舗で経験を積んだ後、海外へ渡航。 フィリピンセブ島への語学留学を経て、ワーキングホリデーで3ヶ国で美容師として働き、2024年にフリーランスビザを取得し、オランダへ移住。
英語はまったく話せないところから始めて、フィリピン・カナダ・イギリス・オーストラリア、そして今はオランダ。5つの国を渡り歩きながら、美容師として働いてきた方がいます。「美容師という仕事は、世界のどこでも必要とされる」と語るその歩みを、本人に聞きました。英語ゼロからの海外の始め方、国ごとの働き方の違い、そしてオランダで拠点を持つまで。これから海外をめざす人への、リアルな道しるべです。
英語はゼロ。まず基礎文法だけやって、フィリピンへ

中学も高校も、英語はほとんど勉強してこなかったんです。話せる英語は、本当にゼロでした。だから海外に出ると決めたとき、まずは日本で、文法だけをひとりで勉強しました。そのうえで、最初に向かったのがフィリピンのセブ島です。
フィリピンを選んだのは、正解だったと思っています。3か月間、平日は朝9時から夕方まで、1日8コマびっしり英語づけ。しかもマンツーマンの授業が多いので、いやでも自分で話さないといけない。おかげで、話す力が一気に伸びました。いきなりネイティブの国に行くより、フィリピンで「ゼロを1」にしてから行くほうが、ずっと安心だと思います。
◆ フィリピン(セブ)の語学留学 ・期間:3か月 ・当時の費用で:約58万円(学校・ホームステイ・手配含む) ・手配:留学エージェント「スクールウィズ」を利用 〔※学校名・金額は本人確認のうえ記載〕
カナダ、イギリス、オーストラリア ── ワーホリで渡り歩く

フィリピンのあとは、ワーキングホリデー(ワーホリ)でカナダのバンクーバーへ。ここでは語学学校に2か月半通いながら、美容師として働き始めました。丸1年いて、半年は日系サロン、半年は中国人オーナーのサロンです。
2020年、コロナで一度、日本に帰りました。実家に「今は帰ってくるな」と言われてしまって(笑)、神戸の少し田舎のほうで、フリーランスとして1年ほど働きました。落ち着いてから、またワーホリでイギリスのロンドンへ。ここは丸2年。ビザも語学学校の手配も、今度は全部自分でやりました。そのあとオーストラリアのシドニーへ、最後のワーホリで1年。こうして、いくつもの国を渡り歩いてきました。
語学留学で英語の土台づくり 。英語学習漬けの毎日を約3ヶ月過ごす。
ワーホリで1年。海外サロンで初めて働く。2店舗を経験。
ワーホリで約2年。ビザ手続きは全部自分で行いインターナショナルな日系サロンで働く。
最後のワーキングホリデー。オランダで移住決断。
現在の拠点。フリーランスビザを取得して美容師フリーランスとして活動中。

働き先は、掲示板とインスタで見つけた
海外での仕事さがしは、意外とシンプルです。僕はインスタか、日本人向けの掲示板サイトで見つけていました。イギリスなら「MixB」という日本人向けのコミュニティサイトが便利で、求人だけでなく、家さがしにも使えます。国ごとに、こうした掲示板がだいたいあります。
ちなみに、美容師の国家資格が必要なのは、基本的にアメリカと日本くらいです。カナダもイギリスもオーストラリアも、資格はいりません。大事なのは、資格よりも実力。上手ければいい、という世界です。
国によって、働き方はこんなに違う

同じ美容師の仕事でも、国やお店によって、雰囲気はまるで違います。
カナダの日系サロンや中国人オーナーのお店では、日本の働き方をそのまま持ち込んでいるようなところもありました。営業の20分前に出勤しても「もっと早く来い」と言われたり。いっぽう、イギリスやオーストラリアで働いたお店は、もっと緩やかでした。営業の10分前に出勤しても怒られないし、暇なときに座っていても何も言われない。スタッフも香港の子やいろんな国の子がいて、インターナショナルな空気でした。程よい緩さのなかで働けたのは、大きな違いでした。
お客さんは、日系サロンだとアジア系の方が多めです。白人のお客さんの髪をどんどんやりたいなら、現地のサロンのほうが向いています。どこで働くかは、自分の目的しだい。「まだ英語が不安」という人は日系サロンが無難ですし、「いろんな国の人の髪をやりたい」なら現地のサロン、という選び方がいいと思います。
そして、オランダ (アムステルダム) へ。
オーストラリアのあと日本に少し戻って、最後にたどり着いたのがオランダです。オランダは、ビザを現地で申請するのが特徴です。まず観光ビザで入国して、着いてからフリーランスのビザを申請します。
ビジネス用の銀行口座に4500ユーロ(日本円でおよそ85万円)を入れておけばとりあえず大丈夫。
◆ オランダでフリーランスを始めるには ・まず観光ビザで入国 → 現地でフリーランスビザを申請 ・ビジネス用口座に 4500ユーロ(約85万円)+申請費用 2〜400ユーロほど ・永住権は、最低5年の在住+オランダ語の試験が必要 〔※金額・条件は変わることがあります。最新情報はご確認ください〕
ビザ取得に大事な条件
🔴英文での銀行の残高証明書(4,500ユーロ以上)を取得する
その他、オランダの個人事業主ビザの申請には、次の書類を準備しておきましょう↓
- オランダ語に翻訳されたアポスティーユ承認付きの戸籍謄本または戸籍抄本
- ビザ申請書(こちらからダウンロード可能)
- 銀行口座の英文残高証明
- ビジネスプラン
- パスポートのコピー
- ビザ申請料
- 賃貸契約書
- 一時滞在許可証ステッカー(パスポート)
- First registration申請用紙(居住地域の市役所ウェブサイトからダウンロード可能)
オランダ個人事業主ビザの申請手順出典元 オランダ個人事業主・フリーランスビザ取得ガイド!条件・手順・費用・事前準備まで解説
今はビザの更新をしながら、永住権をめざしています。オランダは、最低5年住んで、オランダ語の試験に受かる必要があります。長く腰をすえて、この国でやっていくつもりです。
英語は、努力次第でどうにでもなる

いろんな国で働いて思うのは、英語のアクセント(なまり)は国ごとに全然ちがう、ということです。僕はカナダのアメリカ英語が基本だったので、イギリスが一番むずかしく感じました。使う言葉も、微妙にちがったりします。
でも、英語の力そのものは、本人の努力しだいでどうにでもなると思っています。専門用語は学校では習いませんが、お客さんとの会話は、ほとんどが日常会話です。学校で習った内容で、じゅうぶんカバーできます。だから、来てから本気で勉強すれば、ゼロからでもなんとかなります。
これから海外をめざす美容師さんへ

ひとつだけ、はっきり言えることがあります。行くなら、スタイリストになってから。海外はアシスタントの募集がほとんどなくて、「スタイリスト」と名乗れないと、雇ってもらえません。カットモデルを100人くらいやって、一人でお客さんを担当できる状態にしてから来るのがいいと思います。
技術さえあれば、美容師は世界のどこでも必要とされる仕事です。バリスタやシェフと同じで、手に職があれば、わりとすぐ雇ってもらえます。逆に、スキルがないと選択肢がありません。だから、やりたい仕事があるなら、日本である程度やってから行くほうが、仕事さがしはずっと楽になります。
最後に、これから一歩を踏み出す人へ。海外に行くのは、勇気がいると思います。でも、意外と、行ってしまえばどうにでもなります。日本人美容師を求めてくれる人は、いい人ばかりで、多少英語が話せなくても、みんなニコニコして受け入れてくれます。だからまずは、技術だけつけて、行ってしまいましょう。Do your best(がんばって)。
フィリピンからオランダまで。国境をいくつも越えながら、彼がが変わらず握りしめてきたのは、日本でみがいた「技術」と、「行けばなんとかなる」という軽やかさでした。その足どりは、海外に迷っているだれかの背中を、そっと押してくれるはずです。
